「これから賃貸契約を結ぶけど…
初期費用で発生するクリーニング代ってなんだろう?
クリーニング代を拒否することはできる?
そもそも借主が負担するものなの?
賃貸のクリーニング代について詳しく知りたい!」
このような疑問にお答えします。
筆者は賃貸営業歴5年の賃貸営業マンです。
宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士の資格も保有しています。
賃貸の契約ではさまざまな初期費用が発生してきます。
火災保険、賃貸保証料、仲介手数料、鍵交換費用などなど…
その中でも特にトラブルとなりやすいのが「クリーニング代」です。
これからお部屋探しをされる方、またはこれから賃貸契約を結ばれる方で、賃貸の初期費用で発生するクリーニング代について疑問や悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は賃貸の初期費用で発生するクリーニング代について、
- クリーニング代は違法?
- クリーニング代を拒否できる?
- クリーニング代を先払いする意味
- 原状回復費用はクリーニング代とは別で発生
- クリーニング代は返金される?
- 敷金との違い
- クリーニング代の相場
上記7点について詳しく解説をしていきます。
この記事をお読みいただければ賃貸のクリーニング代についてバッチリですよ!
賃貸のクリーニング代は違法?
賃貸のクリーニング代について国土交通省のガイドラインでは、
クリーニング費用は次の入居者確保のためのものであるため、貸主(オーナー)負担が原則
としています。
そのため、「賃貸のクリーニング代を借主(入居者)に請求するのは違法?」とお考えになられる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし結論としては、
賃貸のクリーニング代は違法ではない
となります。
なぜ違法ではないかというと、国土交通省のガイドラインは法律ではなく「指標・指導目標」だからです。
そのため、現在のほぼ全ての賃貸契約で、
「室内クリーニング代は借主負担」
とする特約を含めて賃貸契約を結んでいます。
筆者は賃貸営業マンとして1000件以上の賃貸契約を結んできましたが、室内クリーニング代が貸主負担だった賃貸契約は1件だけでした(初期費用割引キャンペーンとしてクリーニング代が貸主負担だった物件)
それほど現在の賃貸契約では「クリーニング代を借主負担とする」契約が当たり前になっています。
借主負担に不利な特約を認める条件
しかし、すべてのクリーニング特約が認められるわけではありません。
国土交通省のガイドラインではクリーニング費用の特約の有効性について、
クリーニング特約については
①賃借人が負担すべき内容・範囲が示されているか、
②本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が明記されているか或いは口頭で説明されているか、
③費用として妥当か等の点から有効・無効が判断されます。
上記のとおりとしています。
つまり上記の内容に適していなければ、借主負担とするクリーニング費用の特約は無効となるケースもあります。
実際にクリーニング費用などの返金が求められた裁判所の事例もあります。
参考判例:通常損耗補修特約は合意されたとはいえず、仮に通常損耗補修特約がなされていたとしても、消費者契約法 10 条に該当して無効とされた事例
現在は多くの不動産会社でクリーニング費用を借主負担とする特約が結ばれていますが、上記の内容に適している特約内容であるかどうかは確認した方が良いと言えます。
賃貸のクリーニング代は拒否できる?
クリーニング代が借主負担となっているということは、特約で「クリーニング代は借主負担とする」というような文言が含まれているはずです。
ですので賃貸契約を取り交わす際に、
「私はこの特約には応じることはできません」
ということでクリーニング代を拒否すること自体は可能です。
しかし、クリーニング代を借主が負担することが当たり前になっている現在の賃貸契約では、クリーニング代を拒否することで希望の物件の賃貸契約を取り交わすことが出来なくなってしまうか可能性が高いです。
現在の賃貸契約の状況では、クリーニング代を拒否することは現実的ではないと言えます。
貸主(オーナー)も楽ではない
貸主(オーナー)も室内のリフォームや外壁塗装、設備故障による工事費用など…
実は入居者が思っている以上に負担が大きいです。
「家賃収入が楽に入ってオーナーはいいなぁ」
と思うかもしれませんが、実際は貸主(オーナー)もかなり厳しい状況の人もいらっしゃいます。
ですので、貸主(オーナー)がクリーニング代まで負担したら正直厳しいという現状から、まだまだしばらくは特約で借主(入居者)負担としてクリーニング代が請求されると思いますので「賃貸契約では必ず掛かる費用」として割り切った方が良いでしょう。
有効とはならない特約内容は拒否できる
とはいえ、クリーニング費用の特約が認められるのは、
①賃借人が負担すべき内容・範囲が示されているか
②本来賃借人負担とならない通常損耗分についても負担させるという趣旨及び負担することになる通常損耗の具体的範囲が明記されているか或いは口頭で説明されているか
③費用として妥当か
上記の内容に該当されている場合です。
「内容が示されていない、説明を受けていない、費用があまりにも高すぎる」
など…上記の内容に適していない場合は特約が無効となり拒否できるケースもあります。
賃貸契約を結ぶ際には上記の特約内容についてもしっかり確認しておくべきと言えるでしょう。
賃貸のクリーニング代を先払いする意味
敷金が発生しない賃貸契約の場合、室内クリーニング代を先払いする賃貸契約が一般的です。
有名な不動産会社を例に挙げますと、
★大東建託
定額クリーニング費用として先払い
★大和リビング
ルームクリーニング代として先払い
大東建託や大和リビングのような大手賃貸不動産会社も、敷金がない物件に関しては上記のクリーニング名で先払いとしています。
クリーニング代を先払いすることで、下記のメリットが生まれます。
- スムーズな退去が可能
- トラブル回避
それぞれ解説していきます。
スムーズな退去が可能
退去時の室内クリーニング代を先払いしておくことで、室内クリーニング費用以外に原状回復費用が発生しなければ、退去の際には特に費用を支払わずにスムーズに退去することができます。
ここで一番重要なことは、原状回復費用が発生しなかった場合に限るという点です。
例えば、
- タバコのヤニ汚れによるクロス張り替え
- 壁に穴を開けてしまった など
入居者の過失による修繕費用が発生した場合は、当然に修繕費用の支払いが発生しますのでご注意ください。
トラブル回避
退去時にクリーニング代を請求すると、
「クリーニング代を払うなんて聞いていない!」
というトラブルが少なくありません。
また、
「クリーニング代が高すぎる!」
というトラブルも発生する可能性があります。
クリーニング代を先払いすることで上記のようなトラブルも防げますし、オーナーも入居者も安心して契約・退去を行うことができます。
賃貸のクリーニング代は返金される?
賃貸のクリーニング代は「返金されることはありません」
仮に部屋をきれいに利用していたとしても、事前に決められていたクリーニング代から返金されることはありません。
じゃあ部屋を全く掃除しなくて良い…
というわけではなく、全く部屋を掃除しなかった場合は、「追加クリーニング費用」として請求される可能性もあります。
一般常識の範囲内で、定期的に室内の清掃は行うようにしましょう。
敷金との違い
敷金がある賃貸契約の場合は、預けた敷金から退去時に室内クリーニング代を差し引かれるのが一般的です。
敷金はクリーニング代とは違って、クリーニング代やその他の修繕費用などに利用して残った敷金に関しては原則返金されます。
ただし、敷金償却(敷引き)という契約内容の場合は、敷金の返金がない契約となりますので注意が必要です。
敷金に関しましては下記の記事にて詳しく解説をしておりますので、よろしければ参考にご覧ください。
賃貸のクリーニング代の相場
賃貸のクリーニング代は不動産会社やオーナーによってさまざまです。
基本的には下記の2点で決められている不動産会社が多いです。
- 間取り
- ㎡数
間取りでクリーニング代が決められている相場は下記のとおりです。
1R・1K・1DK | 3万円前後 |
---|---|
1LDK・2DK | 4万円~5万円前後 |
2LDK・3DK | 5万円~6万円前後 |
3LDK以上 | 6万円以上 |
また、㎡数でクリーニング代が決められている相場は下記のとおりです。
30㎡未満 | 3万円前後 |
---|---|
30~40㎡未満 | 4万円~5万円前後 |
40~50㎡未満 | 5万円~6万円前後 |
50㎡以上 | 6万円以上 |
まとめ
今回は賃貸のクリーニング代について「知っておくべき7つのこと」を詳しく解説をいたしました。
賃貸のクリーニング代をはじめ、特に退去時の費用に関してはトラブルが非常に多いです。
賃貸契約を取り交わす際は、しっかりと内容を確認したうえで契約を取り交わすようにしましょう。
皆様のより良いお部屋探しを心よりお祈り申し上げます。